こんにちは!皮膚科・美容皮膚科医のあさみです。
かぶれは、誰もが一度は経験したことのある皮膚疾患なのではないでしょうか。
化粧品のサンプルを使ってみたら肌が赤くなった、
ネックレスをつけていたら首が赤くなりかゆみが治らない、
ある服を着ると身体全体が赤くなりかゆくなる…
これらの「かぶれ」は、医学的には「接触皮膚炎」といいます。
原因がはっきりわかる場合もあれば、無意識のうちに触れていたものだとわからないこともあります。
私自身も、化粧品や服の素材などでかぶれを起こすことがよくあります。
身体のかぶれは特に夏に多いんですよね…。
かぶれた時はすぐに塗り薬を塗らないと、
搔きむしってジュクジュクになってしまってからでは治るまでに時間がかかります。
「接触皮膚炎」は、皮膚に接触した物質による刺激や、それに対するアレルギー反応によって起こります。
物質の刺激によって起こる刺激性接触皮膚炎はいつでも誰にでも起こりえます。
アレルギーによって起こるアレルギー性接触皮膚炎は、
例えば長年使っていても平気だった化粧品で突然発症したりすることがあります。
つまり、接触皮膚炎いわゆるかぶれは、いつ何時何に対して起こってもおかしくないと考えることができます。
また、接触皮膚炎は、接触部位に一致して皮膚が赤くなったり水ぶくれができたりすることが特徴です。
赤ちゃんの「おむつ皮膚炎」や主婦の方に多い「手湿疹」も接触皮膚炎の仲間です。
おむつ皮膚炎はオムツの中の糞尿や汗、またはオムツ自体の素材などが刺激になって起こります。
(おむつかぶれの場合はカンジダを併発していたりして一概には言えないのですが…)
手湿疹は、水や洗剤などで繰り返し手を洗うことで手の皮膚が乾燥し肌のバリア機能が失われ、そこへ様々な物質が刺激となることで起こります。
接触皮膚炎の原因となるものには、様々なものがあります。
以下に、発生部位ごとに原因の例を挙げてみます。
頭 → シャンプー、染毛剤、育毛剤、帽子、ヘアピン
顔 → 化粧品、医薬品、香水、メガネ、植物、日焼け止め
頸部 → ネックレス、化粧品、香水、医薬品、衣服
体幹、腕、脚 → 衣服、洗剤、金属、医薬品
手足 → ゴム、皮革製品、植物、医薬品、洗剤、化粧品、金属
陰部 → 衣服、洗剤、コンドーム、避妊用薬品
かぶれを見た時には、詳しくお話を伺って原因物質を特定し避けることが治療の始めの一歩となります。
接触皮膚炎の治療のスタンダードはステロイドの塗り薬となります。
ステロイドはその効き目の強さによってランク分けがされています。
顔や脇、陰部など塗り薬の吸収の良い部位には弱めのステロイドを使い、
手のひらや足の裏など吸収の悪い部位には強めのステロイドを使っていきます。
正しい強さのステロイドを正しい塗り方で用いれば、接触皮膚炎は大体1週間程度で良くなリます。
ステロイドといえば怖いというイメージをお持ちの方も多いかもしれません。
確かにステロイドというお薬は副作用も多く、慎重に扱わなければならないお薬です。
特に顔に使用する場合は副作用が出やすいので慎重な選択が必要です。
ですが、ステロイドの怖い副作用の多くは、飲み薬のステロイドを長期間使用することによって起こるものです。
短期間のみ医師の指示に従って塗り薬のステロイドを使う分には安心して使えます。
かゆみが強い場合などはご希望に応じて抗ヒスタミン薬という薬やかゆみ止めの塗り薬をお出しすることもあります。
また、皮膚自体が乾燥してしまっている場合はそれだけでかゆみを誘発してしまうこともあるため
保湿剤をこまめに塗っていただくことも必要になります。
詳しくお話を伺っても原因が特定できず症状を繰り返している場合や患者さんご自身がはっきりと原因をお知りになりたい場合、「パッチテスト」という検査が必要になります。
これは原因となりうる物質を直接健常な肌に貼り付ける検査です。
原因となりそうな物質を背中などに貼り付けたまま48時間過ごしていただき、剥がしてから30分~1時間後に判定を行います。
除去した部位に赤みやぶつぶつなどかぶれなどを認めれば陽性と判断されます。
この検査は実際にかぶれを誘引する検査ですので、少ない確率ではありますが全身に湿疹が拡大し重症化する恐れがあります。
そのため、当院ではパッチテストが必要な患者さんには専門機関をご紹介させていただいております。
かぶれは、誰にでもいつでも起こりうる疾患です。
放置しているとかゆみが強くなって搔き壊してしまうこともあるため
なるべく早く皮膚科を受診しましょう。
また、塗り薬に加えて、これでかぶれたかもしれないと心当たりのあるものは避けるようにしましょう。
複数候補がある場合は、実験的にいったん全部やめてみるのも手です。