こんにちは!皮膚科・美容皮膚科医のあさみです。
アトピー性皮膚炎は食事で治ると思っていませんか?
実際、そんなことはありません。
アトピー性皮膚炎はその方の体質によるところが多いですが、それが食事だけで治ることはないと言っていいでしょう。
アトピーがすっきりと完治することはほとんどなく、多くの場合は塗り薬を使ってコントロールしながら長く付き合っていかなければならない病気です。
アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎は、お子さまから大人まで幅広い年齢層に見られる慢性的な皮膚の病気です。
この皮膚疾患の特徴は以下の通りです。
- 湿疹とそれに伴うかゆみが、長い期間を経て良くなったり悪くなったりを繰り返す
- 皮膚が乾燥しがちで、赤い湿疹ができやすい
- 首、ひざ、ひじの内側などに左右対称に上記の症状が現れやすい
- 症状がいったん落ち着いても、また同じ症状が現れて長引きやすい
アトピー性皮膚炎の多くは子供の頃に発症しますが、
大人になって初めて発症する場合もあります。
アトピー性皮膚炎を発症する方の多くは「アトピー素因」というものを持っていることが多いです。
これは、ご本人やご家族にアレルギー歴があったり、抗体を作りやすい傾向があったりすることが特徴です。
アトピー素因を持つ方がアレルギーや様々な刺激に晒されることで、それらの要因が複雑に絡み合い、アトピー性皮膚炎が引き起こされます。
アトピー性皮膚炎の症状
アトピー性皮膚炎は、慢性的な皮膚の炎症疾患です。
主な特徴は以下の3つです。
- 強いかゆみを伴う湿疹
耳の後ろやひじ・ひざの内側、手足の関節部などに左右対称に湿疹ができます。
また、皮膚が赤くなって湿疹ができ、掻きむしるとジュクジュクしかさぶたになります。
症状を繰り返すうちに、患部の皮膚が分厚く固くなることも(苔癬化)。
- なかなか治らない長い経過
症状が良くなったり悪くなったりを繰り返し、完治はしにくいです
2歳未満では2カ月以上、2歳以上では6カ月以上症状が続くものを「アトピー性皮膚炎」と定義します。
- 年齢によって症状の出やすい場所が異なる
乳児期:頬や口の周り、頭皮、耳の周囲、背中、手足
幼小児期・学童期:首、ひじやひざの内側、手首、足首
思春期・成人期:皮膚のごわごわ感、小豆大の硬い発疹、色素沈着、顔の赤み
アトピー性皮膚炎は多くの場合1~5歳で発症しますが、適切な治療を受けることで症状は改善します。
ただし、大人になっても症状が続いたり悪化したりする場合や、成人になってから発症する場合もあります。
アトピー性皮膚炎の原因
アトピー性皮膚炎は、単一の要因だけでなくいくつかの要因が複雑に絡み合って発症する皮膚の病気です。
その主な原因として、以下の4つが挙げられます。
- 皮膚のバリア機能の低下
アトピー性皮膚炎の方は、健康な方と比べて皮膚のバリア機能が弱くなっていることが多いです。
バリア機能が低下することで、皮膚が乾燥しやすく外からの刺激を受けやすい状態になります。
- 免疫の異常による過剰な反応
バリア機能が低下した皮膚では、汗やアレルゲンなどの刺激物質が皮膚の中に入り込みやすくなります。
その結果、皮膚の知覚神経が過敏になり、少しの刺激でもかゆみや赤み、腫れなどのアレルギー反応が起こりやすくなります。
- かゆみの悪循環
皮膚の乾燥や強いかゆみのため、つい患部を掻いてしまうことがあります。
掻くことでさらに皮膚が刺激され、アトピー性皮膚炎の症状が悪化してしまう悪循環が生じます。
- アトピー素因との関係
アトピー性皮膚炎の方の多くは、「アトピー素因」という体質を持っています。
アトピー素因とは、アレルギーになりやすい体質のことで、ご家族やご本人に他のアレルギー疾患がある場合や、アレルギーの抗体を作りやすい場合などが当てはまります。
ただし、アトピー性皮膚炎の発症や悪化にはこれらの要因が複雑に組み合わさって影響しているため、原因を一つに特定できないこともあります。
アトピー性皮膚炎の治療・予防法
アトピー性皮膚炎と診断されたら、皮膚科医の指導のもと適切な治療を受けることが重要です。
治療の基本は、①原因・悪化因子の除去②日々のスキンケア、そして③薬物療法の3つです。
- 原因・悪化因子の除去
アレルゲンや生活環境などがアトピー性皮膚炎の発症や悪化に関わっている可能性がある場合、それらを避けるようにします。
例えば、特定のアレルゲンに反応している場合はそのアレルゲンを避け、湿度や温度などの生活環境が関係している場合は、暮らしの環境や衣服を調整します。
こういったものの特定に血液検査でできるアレルギー検査が有用です。
- スキンケア
保湿剤を使って皮膚のバリア機能を回復させることが大切です。
アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚は非常に乾燥しており、バリア機能が低下しています。
入浴時は、肌に優しい低刺激性の石鹸を使って肌をこすりすぎないように気をつけましょう。
入浴後は、皮膚が乾かないうちにすぐに保湿剤を塗ります。
また、かきむしって悪化することを防ぐためにこまめに爪を短く切りましょう。
- 薬物療法
使用する塗り薬は、ステロイド外用剤などの抗炎症作用のある薬が基本となります。
症状の重症度や部位、年齢などを考慮して、適切な強さのステロイド外用剤を選ばなければなりません。
症状が改善したら、徐々にステロイド外用剤の使用を減らしていきます。
- ステロイド外用剤で効果が得られない場合や、症状の程度や部位によっては、新しいタイプの治療薬を使用することもあります。
アトピー性皮膚炎は患者さんの元の体質による部分が大きい病気ですが、適切な治療を受けることで症状をコントロールできます。
特に乳児期に発症するアトピー性皮膚炎は、早期に適切な治療を行うことでほとんどの場合軽快します。
自己判断で治療を中断すると症状が繰り返し現れ重症化することがあるので、皮膚科医の指導に従って専門的な治療を受けることが大切です。